国見の山間に工房を開く家具職人の恒成哲三郎さん。その家具づくりの原点は、世界中を放浪していた若いころに見たヨーロッパ人の木の生活にあるという。「ひとつの家具を孫、ひ孫の代まで大事に使い続け、そのことに誇りを持っているのが素晴らしいと思いました」。そんな思いから木工修業を志願してドイツに渡った恒成さんは、「木というスゴい素材をどう生かすか」をテーマに、木の生き様を残しながら人と共生していく家具づくりに心を砕く。「お客様に長く使っていただけること」を第一に考えた家具は、つくりが頑強で飽きのこないシンプルなデザイン。使い手の思いを汲み、耐久性や使い心地まで十分に考えたモノづくりは、テーブルや椅子、チェストなどにとどまらず、茶箪笥、文机、仏壇、まな板にまで及ぶ。「木との出合いは一期一会。出合った木を最大限に生かし表現していきたい」と恒成さん。納めた家具は傷がつけば削り直し、壊れたら修理する。そうやって使い込むほどに味わいを増す家具は、やがて家族の宝物になる。  ボダイジュやユウゼンケヤキ、ハナミズキなどの木々に彩られ、季節の訪れを間近に感じられる美しい庭に面した居間。その中央でどっしりと存在感を放つ長い木のテーブルは、Tさん夫妻がドライブ途中にたまたま立ち寄った『くにさき六郷舎』でオーダーしたものだ。2年余り前、この居間を増築し、友人の家族を呼んで一緒に食事を楽しむのに長さ3m位のテーブルが欲しいと考えていたご主人。たまたま恒成さんが持っていた樹齢千年近いナラの一枚板と出合い、素朴でラフな作風にも惚れた夫妻はテーブルとそれに合わせた椅子の製作を依頼することに。やや低めにデザインしてもらったという椅子は、腰掛けると足が床にしっかり着くので、食後もゆったりとくつろぐことができる。「納めていただいてすぐに犬がテーブルの天板をひっかいて傷つけてしまったんです。でも恒成さんが『それも家族の歴史ですよ』と言ってくださって(笑)。いずれ削り直しもできるとのことで、安心して使っています」と奥様。使うほどに少しずつ色も深みを増してきた家具たちは、家族の物語を刻みながら年を重ねている。
   
■くにさき六郷舎
 くにさきろくごうしゃ
国見町大字野田2097-1
tel.0978-82-0748
営/8:30〜17:30
休/水曜、第2・4木曜